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Else Kuala Lumpurの概観。元の建物と、その上の2階が拡張された様子が見える
マレーシアインテリアデザイナー協会(MIID)は、マレーシアのインテリアデザイン業界を代表する団体として、MIID REKA Awards 2024の受賞者を発表しました。青山デザインフォーラム(ADF)は、2018年よりこのアワードを企業パートナーとして支援しています。今年のADF特別賞は、ホスピタリティカテゴリーにおいて受賞したAr.IDr Adela Nathalie Nuraini Askandarによる「Else Kuala Lumpur」です。本プロジェクトは、歴史的建築物であるLee Rubber Buildingを静寂の都市型リトリートへと革新的に生まれ変わらせた作品です。
1階から3階までの吹き抜け空間
プロジェクト概要
「Else Kuala Lumpur」は、クアラルンプールの中心地、チャイナタウンに位置する1931年建設のアールデコ建築、Lee Rubber Buildingを活用した49室のブティックホテルです。2022年11月に完成した本プロジェクトは、歴史的な趣と現代的なラグジュアリーが融合した空間を提供しています。歴史を感じさせると同時に、周囲の環境に調和しつつ、ゲストにとっての安らぎの場として際立っています。
1階応接室
デザインコンセプトと理念
本プロジェクトのデザインコンセプトは「二元性」をテーマに、過去と現在、公共と私的、生と洗練が調和する空間を追求しました。チャイナタウンの活気ある喧騒を離れ、穏やかさと静寂に包まれるような環境を創り出すことが目標でした。この建物の空間体験を再構築することで、アールデコ建築に新たな生命を吹き込み、歴史的価値を損なうことなく現代的なリトリートとして再定義しています。
1階のリビングルーム
空間特性
自然光と換気
本プロジェクトの特徴のひとつは、建物内部に複数のアトリウムを設けたことです。これらの空間は自然光を取り入れ、館内の通路部分に換気を確保しています。時間帯によって変化する光の演出は、ゲストに自然環境とのつながりを感じさせます。
垂直方向の新しい拡張部分
既存の4階建て建築の上に3階建ての新しい拡張部分を設け、歴史的建物に調和したモダンな空間を追加しました。この拡張部分は、コンクリート充填スチール柱で支えられており、過去の建物を尊重しつつ、現代的な美しさを加えています。縦型のフィンを配したファサードは日差しを遮り、プライバシーも確保しています。
既存の建物、新しい空間、その上の拡張部分との関係を示す断面図
1階レイアウトプラン
ストリートとの再接続
1階のレストランは、広いガラス窓を通じてチャイナタウンのにぎやかな街並みと視覚的なつながりを持つように設計されています。この選択により、自然光が取り込まれるとともに、ホテルとその周囲の都市環境との対話が生まれました。
1階エントランスホール
クライアントの依頼内容とビジョン
クライアントは2016年にLee Rubber Buildingを取得し、新たなホスピタリティブランド「Else Retreats」の旗艦ホテルとしてリノベーションを進めました。歴史ある建物を現代の避難所として蘇らせる一方、クアラルンプールのチャイナタウンに息づく魅力を取り入れたデザインが求められました。
デザインディテールと素材選び
「Else Kuala Lumpur」のインテリアは、落ち着いた色調や厳選された家具、アートピースが調和し、温かみと洗練が感じられる空間を生み出しています。
• 家具とアート: 再利用された素材や手作業で作られた要素が重要な役割を果たしています。特に、ペナンの工房で見つけた100年もののメルバウ材を使った16フィートのダイニングテーブルや、Omar Khan Rugsと共同制作した特注ラグが印象的です。
• アンティークのアクセント: バーには、インドのアルメニア宮殿から持ち込まれた手彫りの木製柱が用いられており、歴史的な壮麗さを加えています。
• 文化的な職人技: 下層階の客室のベッドヘッドは、COVID-19パンデミック中にボルネオのビダユ族とペナン族によって精巧に編まれました。
機能性とゲストエクスペリエンス
6階コーナースイートの一部
元の建物内のスタンダードルームの一例
「Else Kuala Lumpur」は、贅沢さと快適さを兼ね備えたゲスト体験を提供します。自然換気を活かした廊下や、落ち着いた色調のインテリアは、訪れる人々に心の安らぎをもたらします。また、屋上プールはクアラルンプールの街並みを一望できる静寂の空間を提供し、多目的室やライブラリーは反射やリラクゼーションの場を提供します。
プールが設置されている4階、ゲスト更衣室エリアから
デザインの影響
歴史的建築物と都市の文脈を調和させることで、「Else Kuala Lumpur」はデザインの持つ変革力を体現しています。このプロジェクトは、Lee Rubber Buildingの建築遺産を保存するだけでなく、現代の避難所として再定義しました。ホスピタリティデザインにおける持続可能性や文化的意義の重要性を示す象徴的な存在です。
1階ラウンジ
「Else Kuala Lumpur」は、Ar.IDr Adela Nathalie Nuraini Askandarの革新的で考え抜かれた仕事を示す証として輝いています。このプロジェクトはMIID REKA Awards 2024のADF特別賞を受賞するにふさわしいものであり、ホスピタリティ業界における新たな基準を示しています。